学校での運動器検診

[5]「親子のための運動器相談サイト」を改訂したリーフレット

A. 部位別の疾患・障害の説明と対応について

1. 側わん症(そくわんしょう)

◇ 側わんは背骨が横に曲がった状態ですが、問題なのは背骨が捻れながら横に曲がった状態で、悪化すると背骨ばかりか胸郭も変形し、生活に支障を来します。

◇ 7割が特発性側わん症です。特発性とは原因不明という意味です。8割が女性で思春期に進行します。

4つのチェックポイントがあります。

  1. ① 両肩の高さの左右差
  2. ② 脇線の左右非対称
  3. ③ 両肩甲骨の高さや位置の非対称
  4. ④ 前屈したときの背中や腰の高さの左右差(肋骨隆起、腰椎隆起)

対応:これらの異常が認められた場合、側わん症の可能性がありますので、専門医への相談をお勧めします。なお、地域によっては特殊な写真撮影(モアレ撮影)による側わん症学校検診を行い、側わん症の早期発見に努めています。

2. 背中/腰

腰椎分離症・すべり症

◇ 腰椎分離症は腰の骨が反復するストレスによって分離する状態です。腰椎分離性すべり症は分離症にともなって、椎体がすべる(ずれる)ものです。腰痛のほか、腰の神経が圧迫されると殿部痛(おしりの痛み)や、大腿後面痛(もものうしろに痛み)を訴えます。運動時に痛みが増します。
→分離症(椎弓疲労骨折、関節突起間部疲労骨折)

腰椎分離症という病名ですが、基本的には負荷動作のくりかえしによる疲労骨折で、使いすぎ症候群の一つです。多く は椎弓とよばれる部分の両側性に起こりますが、片側性もこともあります。

対応:激しい運動を控えましょう。痛みが持続するようであれば、整形外科専門医を受診して、検査を受けましょう。

椎間板ヘルニア

◇ 椎間板の一部が突出した状態が椎間板ヘルニアです。腰痛やあしに痛みがあります。あしのしびれやまひがある場合要注意です。

対応:激しい運動を控えましょう。痛みが持続するようであれば、整形外科専門医を受診して、検査を受けましょう。

終板*障害

◇ 成長期では、ヘルニアとともに骨の一部も突出し、ヘルニア同様に腰痛やあしに痛みが生じることがあります。あしのしびれやまひがある場合要注意です。
対応:激しい運動を控えましょう。痛みが持続するようであれば、整形外科専門医を受診して、検査を受けましょう。
* 終板とは、椎間板と椎骨の境界の組織で硝子軟骨と線維性軟骨からなり、レントゲンには映りません。転倒、転落などによって損傷することがあり、腰痛の原因になります

腰痛症(筋々膜性腰痛)

腰背部への過剰な負荷や反復するストレスが加わり生じます。主に背筋群の筋疲労が原因です。背筋に緊張や圧痛(押さえての痛み)がみられ、腰背部の動きが制限されます。腰の左右どちらかが痛い。痛みのある側と反対方向に体を傾ける動きが制限されます。

  • ・1か月以上続く腰痛
  • ・楽になる姿勢がなく安静時痛(寝返り時は除く)を伴う。
  • ・発熱を伴う
  • ・外傷(転倒や転落など)を受けた
  • ・足のしびれがある(尿回数が増えたり尿失禁がある)

対応:これらの徴候が見られた場合はさらなる精査が必要なため医療機関の受診をお薦めします。

腰痛症になると、その後も繰り返す人が見られます。それを防ぐため腰の骨を支える筋肉や靭帯を鍛えることが重要です。そのため、腰痛症を繰り返す人は日ごろから筋力を強くする体操を行うように習慣づけましょう。しかし、腰痛が強い時期に行ってはいけません。痛みがとれてから行ってください。腰痛体操の基本は、腹筋、背筋の筋力強化とストレッチングです。

3. 肩

リトルリーグ肩

◇ くりかえす投球動作で上腕骨の成長線で骨がずれる病気です。成長障害を生じる危険性があります。

対応:しばらく安静にしましょう。整形外科専門医を受診し、検査をしましょう。

投球肩障害

◇ 繰り返しの投球動作によって損傷される病態が投球肩障害です。疼痛やひっかかり感があれば要注意です。

対応:しばらく安静にしましょう。整形外科専門医を受診し、検査をしましょう。

4. 肘

野球肘

◇ 投球動作によって生じた肘関節痛の総称です。肘の外側にある上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎は小学生に多く、中学生以降では内側側副靱帯起始部での剥離骨折や断裂を生じやすいです。10~16歳の投手に多く、投球時、後に肘痛が出現します。骨軟骨が剥離すると引っかかり、肘が動かなくなったり、腫脹が生じたりします。

対応:投球時の痛みがあれば、早めに整形外科専門医を受診しましょう。

テニス肘

◇ 手指・手関節の筋の付着部である上腕骨外上顆で、使いすぎ(オバーユース)で微小断裂や変性、炎症が生じる病態で、テニス肘や上腕骨外上顆炎とも呼ばれます。ものを持ち上げたり、タオルを絞るなどの動作で肘痛が出現します。

対応:練習前のストレッチングや練習後の患部のアイシングをしっかりとしましょう。

5. 股関節

ペルテス病

◇ 発育期(4~8歳)に大腿骨頭(股の付け根の骨)への血行不良が生じて、大腿骨頭が変形する病気です。股関節痛や膝に痛みがあり、歩行時に増します。

対応:歩行時の痛みがあれば、早めに整形外科専門医を受診しましょう。

大腿骨頭すべり症

◇ 思春期に股の付け根の骨が成長線ですべる(ずれる)病気です。股関節や膝、下肢が痛くなります。歩行で痛みが増します。

対応:歩行時の痛みがあれば、早めに整形外科専門医を受診しましょう。

6. 膝

半月板損傷

◇ 膝関節のクッションと安定性の役割をもつ半月板が損傷されるものです。運動時痛や引っかかり感があります。ときにひざが動かなくなることもあります。

対応:症状が強ければ、整形外科専門医を受診しましょう。

靱帯損傷

◇ スポーツでひざをうったり捻ったりして、じんたいが傷むけがです。痛みやはれが生じ、時間が経つと不安定感がでてきます。

対応:整形外科専門医を受診して、治療方針を決めてもらいましょう。

軟骨(なんこつ)損傷

◇ 膝の関節表面のなんこつがいたみます。けがではがれたり、原因がなく剥がれたりすることもあります。痛みやはれ、ひっかかり感がでます。

対応:痛みが持続すれば、整形外科専門医を受診しましょう。

オスグッド病

◇ 発育期に膝蓋腱が付くすねの骨の部位で繰り返し牽引力が加わって、骨がうまくつかなくなった病気です。頻度の高い障害で、膝痛(走る、ジャンプ、階段昇降)があります。

対応:運動前のストレッチングと運動後の患部のアイシングをしましょう。

ジャンパー膝

◇ 膝蓋腱や大腿四頭筋腱が膝蓋骨に付着する部位で傷む病気です。

きっかけのない膝痛

◇ とくに原因がなく膝に痛みが出て重要なものに、骨のがん(骨肉腫)があります。腫れや熱が続く場合は要注意で整形外科専門医の診察をすすめます。

7. 脚

肉ばなれ

◇ ダッシュやジャンプなどで筋肉が離れたように感じて痛みがでるものです。ももやふくらはぎでおこりやすいです。初期治療が大切です。

対応:RICE治療をしっかりと行いましょう。

すねの疲労骨折

◇ すねに弱い外力が繰り返し加わって生じた骨折です。ランニング、ジャンプ競技で生じやすいです。

対応:運動を控え、患部のアイシングをしましょう。整形外科専門医を受診しましょう。

シンスプリント

◇ すねの内側の下1/3に痛みや不快感が出ます。陸上トラック競技や幅跳びで多いです。

対応:運動を控え、患部のアイシングをしましょう。整形外科専門医を受診しましょう。

8. 足首

ねんざ(捻挫)

◇ 足関節をつなぐじんたいが損傷されるもので、痛みや腫れが生じます。きちんと治療しないと再発したり、痛みが残ったりします。初期治療が大切です。

対応:運動を控え、患部のアイシングをしましょう。整形外科専門医を受診しましょう。

9. 足首

使いすぎ

◇ スポーツやバレエなど足関節をよく使う競技で、足の骨の周りに棘のような骨ができたり、なんこつが傷んだり、剥がれた骨がひかったりする病気があります。専門医の診察をすすめます。

対応:痛みが持続すれば、整形外科専門医を受診しましょう。

外脛骨障害

◇ 外脛骨は舟状骨の後内側に位置する過剰骨(発生学的に遺残した骨)です。思春期にスポーツをきっかけとして疼痛が出ることが多いです。足部の中程内側に疼痛と圧痛を認めます。同部に骨性隆起があります。足のアーチの低下を認めます。

対応:痛みが持続すれば、整形外科専門医を受診しましょう。

かかと:踵骨骨端炎(シーヴァー病)

◇ 踵の骨の軟骨に起こる病気で、学童期にかかとへの牽引力が骨化障害を起こして出現します。

対応:痛みが持続すれば、整形外科専門医を受診しましょう。

足のゆび:フライバーグ病

◇ 10代の女の子に多く、中足骨(足の指の付け根の骨)の骨軟骨が損傷される病気です。関節の痛みや腫れが生じます。

対応:痛みが持続すれば、整形外科専門医を受診しましょう。