コラム 2025.06.10

スポーツ管理栄養士・テジンが伝授する「食べる戦略」その2『骨の強化に毎日納豆1パック!』

一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の人の“食”を指導する管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、食の正しい情報を、本企画では連載でお届けします。

骨粗鬆症予備軍

   骨粗鬆症。有名な病気なので皆さん知っていると思いますが、骨が脆くなる症状です。骨は身体を支え、脳や内臓を保護し、そのほかにも血液を作ったり、カルシウムを貯蔵するなど重要な働きをするうえ、歩く、動くなど、あらゆる身体活動の起点になるので、骨が脆くなるということは、私たちが生きていく上で、さまざまな弊害が起きることは容易に想像がつくと思います。

   でも「骨粗鬆症って、歳をとってからの病気でしょ?」と、若い世代の方はや働き盛りの男性などは、自分に関係ないと思っている人が多いようです。

 実は、そうは言っていられないんです。というのも、現代人は、高齢者だけでなく、どの世代にも栄養不足状態「低栄養」の人がいます。いわゆる栄養失調状態のことで、痩せ細っている人をイメージするかもしれませんが、カロリーを摂りすぎた栄養過多でも「低栄養」という人もいます。これが現代人の“低栄養”の特徴なんです。

 低栄養になると、さまざまな種類の栄養が不足しているので、負の影響もさまざま。例えば疲れやすい、眠れない、風邪をひきやすい、気力が湧かない、うつ的な気分になる、など、体のみならず心にも現れることがあります。

 さて、話は「骨粗鬆症」に戻ります。この病気も栄養不足が原因になります。骨を丈夫にする栄養素は、骨の材料となるカルシウム。そしてもう1つはビタミンK2という栄養素です。これがセットとなって初めて丈夫な骨が作られますから、若くても、すでに低栄養気味の方は、骨粗鬆症予備軍なんです。

ビタミンKの威力

 カルシウムは有名な栄養素で、みなさん、意識して摂ろうと思っている人も多いようですが、ビタミンKはあまり知られていないようです。このビタミンKの大切さを知ってもらうために、ここで骨がどのように作られ、強くなるのか、その仕組みを紹介しておきましょう。

 私たちの体の中では、毎日、古い骨が壊れ、新しい骨が作られています。繰り返されていて、これを「骨の新陳代謝」と言います。

 この代謝の中で、新しい骨が作られる時、材料になるのはカルシウムですが、そのカルシウムを骨に沈着させるのがビタミンKです。

 つまり、この栄養素が体内になければ、骨の新陳代謝がスムーズにいかなくなるわけですから、骨が壊され続けてしまい、強い骨が作られないことになるわけです。つまり、この栄養素を日頃から摂っていない人は、早かれ、遅かれ、骨が脆い状態になる。そういうことなのです。

カルシウムとビタミンKを摂る

 ではそのカルシウムとビタミンKという栄養素をどうやって摂取すべきか?

 まずビタミンKには大きく分けて2種類あります。それはビタミンK1とビタミンK2です。

・ビタミンK1:ほうれん草や小松菜などの緑の野菜に多く含まれる

・ビタミンK2:納豆やチーズなど発酵食品に多く含まれ、骨の健康に深く関わる

 ビタミンK1とK2は両方とも脂溶性ビタミンで、血液の凝固や骨の健康に重要な役割を果たす栄養素です。ビタミンK1は、植物由来で、特に緑黄色野菜や海藻類に多く含まれます。一方、ビタミンK2は、腸内細菌によって生成されるので、納豆やチーズなどの食品に多く含まれます。

 とくにビタミンK2は、カルシウムを結合させるタンパク質「オステオカルシン」を活性化させ、カルシウムを骨にしっかりと定着させる働きを持っています。

 このビタミンK2の摂取目安は約150μg。納豆1パック(40〜50g)のに約300μg以上含まれているので、毎日納豆を1パック食べるだけで余裕でカバーできます。

 ちなみに納豆は、大豆に含まれるタンパク質やカルシウム、食物繊維を摂ることができますし、大豆よりも納豆に多く含まれるビタミンB2は、糖質、脂質、タンパク質の代謝を助け、発育をサポートしてくれます。

 そこで、納豆は老若男女が毎日1パックを目標に食べることをオススメしたいのですが、

 特に意識して欲しい人は、①骨の形成が活発な成長期の子ども・学生、②激しい運動をするアスリート、③骨密度が急激に低下しやすい50代前後の女性、④栄養不足になりがちなダイエットをしている人たちです。

 最後に、ビタミンKを効率よくとる料理を1つ紹介します。ビタミンKは、

 油に溶ける性質があるので、油を使った炒め物にして吸収率をアップさせることです。

 そこで、オススメ料理は、納豆小松菜のチャーハンです。納豆も小松菜もビタミンKの宝庫です。ここにちりめんじゃこを入れたらカルシウムも一緒に取れて一石二鳥です。

フライパンに油ひき、そこに納豆と小松菜を炒め、さらにご飯を加えてよく炒めるだけ。ぜひ試してみてください。

(文・Tejin)

 

PROFILE

Tejin(テジン

管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。今はボクシングジムや大学ラグビー部で増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを行っている。また、競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を提供。執筆や講座出演も多数。

 

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