コラム 2025.06.26

スポーツ管理栄養士・テジンが伝授する「食べる戦略」 その3「熱中症対策・自発的脱水を予防する!水分・糖分・塩分補給のコツ」

一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の方の“食”を指導してきた、管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、信頼できる食の情報を連載でお届けします。

見えない脱水「自発的脱水」に注意!

 

  暑さが増すこの季節、運動中の「熱けいれん」や「熱中症」はアスリートに限らず、すべての人にとって注意すべきリスクです。表立った症状が出なくても、スタミナ切れや集中力の低下に悩む選手が増えるのもこの時期です。

  その原因が、単なる「水分不足」ではなく、“自発的脱水”である可能性をご存じでしょうか?

  自発的脱水とは、「水分をとっているつもりでも、体内に保持できていない」状態です。

  その多くは、水と一緒に失われるナトリウムなどの電解質を補えていないことが原因です。

  この状態になると、飲んだ水分は吸収されずに尿として排出されやすくなり、体内の水分バランスが崩れ、隠れ脱水が進行してしまいます。結果として、熱中症やけいれん、後半の失速といった不調につながります。

 

「水だけ大量に」はNG!

 

 たくさん汗をかいたあとに水だけを飲むと言う人もいます。しかし、水だけでは体内のナトリウム濃度が下がってしまい「低ナトリウム血症」になる恐れがあります。これも自発的脱水の一種で、脱水症状をむしろ悪化させてしまうことがあります。つまり、「水だけ飲む」のは逆効果。水・塩・糖をバランスよく補うことが、水分補給の正解なのです。

カギは「水・塩・糖」の同時補給!

 

   自発的脱水を防ぐには、「水分・塩分(ナトリウム)・糖分」をセットで補うことが重要です。この3つがそろってはじめて、水分は体に吸収・保持されやすくなります。

   そのために有効なのが、スポーツドリンクの活用です。

   スポーツドリンクには、汗で失われやすいナトリウムやカリウム、吸収を助けるブドウ糖や果糖が含まれており、水よりも速やかに体に届きます。熱中症やけいれんの予防に最適な飲み物と言えるでしょう。

飲み方にもコツがある

 

 ポイントは、「喉が渇く前に、少量ずつ、こまめに飲む」こと。目安は15〜20分ごとに100〜150ml程度の補給。喉が渇いてからでは遅いのです。

  味が濃いと感じるときや、のど越しが悪いときは水で1:1に薄めてもOKです。

  また、水分は5〜15℃くらいの温度がもっとも吸収されやすいとされています。

  スポーツドリンクを飲んでも「胃がぽたぽたして気持ち悪い」、「走るとチャプチャプ音がする」といった場合、それは吸収されておらず胃にとどまっているサインかもしれません。

  この原因としては、①飲みすぎ、②温度が冷たすぎる、③糖分や塩分の濃度が高すぎる(=浸透圧が高い)といったことが考えられます。

   このようなときは、ドリンクを薄める・温度を調整するなどの工夫をしましょう。

スポーツドリンクの理想的な濃度は?

  運動中に適したスポーツドリンクの条件をお伝えしておきます。

 ・糖質  4〜6%(=4〜6g/100ml) |

 ・ナトリウム    40〜80mg/100ml     |

  たとえば、「ポカリスエット」は

・糖質:5.7%

・ナトリウム:約49mg/100ml

 まさしくスポーツ時に理想的な組成で設計されているんですよ。

食事からの対策も忘れずに

 

  運動中の水分補給はもちろん、日常の食事の内容も非常に大切です。

  スポーツドリンクを飲んでいても、食事からの糖質やミネラルが不足していれば、体内バランスは崩れ、脱水や熱中症を招きかねません。

  汁物(味噌汁やスープ)や主食(ごはん・パン)は、水分と糖質・ミネラルを同時に補えるため、暑い時期には特におすすめです。

まとめ

自発的脱水を防ぐには

1、水・塩・糖の同時補給

2、スポーツドリンクを15〜20分おきに少量ずつ

3、ドリンクが吸収されにくいときは、薄めたり温度を調整

4、食事からもミネラル・糖質を補い、体づくりを支えよう

 これからの季節、暑さに負けない体づくりには、正しい水分補給と栄養バランスが不可欠です。スポーツドリンクを“飲み方”を工夫して、体の内側からコンディションを整えていきましょう!

PROFILE

Tejin(テジン)

管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。今はボクシングジムや大学ラグビー部で増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを行っている。また、競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を提供。執筆や講座出演も多数。

 

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