コラム 2023.10.05

スポーツマンに多い「疲労骨折」。鍛えているのに骨が折れてしまう、その原因と対策。【後編】

 「スポーツの秋」到来。読者のなかにも、これから運動やスポーツに取り組もうと考えている人もいると思いますが、そこで気をつけたいのが疲労骨折です。久しぶりにランニングを始めて夢中になったのもつかの間、脛(スネ)が痛くなり、病院に行ったら「疲労骨折ですね」なんて、ショックなことを言われるという人も少なからずいるのです。

 そこで、今回は、前回に続き、「疲労骨折」に詳しい整形外科医の石橋恭之先生にお話を伺い、疲労骨折の治療法、予防法を教えていただきました。

疲労骨折の治療法とは?

 一般的な骨折の場合、主にギプス(保存療法)と手術の2パターンの治療法がありますが、疲労骨折の治療はどんな方法があるのでしょうか?

「保存療法と手術のほかに、原因となった運動動作を一時ストップして安静にするだけの治療も多々あります」と石橋先生。

 疲労骨折は外部からの圧力ではなく、あくまでも体内部の生理的な反応。初期症状の痛みだけ(ヒビが入っていない)の場合はもちろん、仮にヒビが入っていたとしても、原因となった運動を2〜3か月休むことで痛みが軽減し、自然に治ってしまうこともよくあるのだそうです。

「骨は金属とは違って細胞が日々、再生します。つまり骨にストレスやダメージがあっても、生体がもともと備えている治癒機転を働かせ、ストレスを一定期間、回避すれば特別な治療をせずに元に戻るのです。しかしその限界点を超えてストレスをかけ続けてしまうと、完全に折れてしまいます。そうなると、骨に金属などを入れる手術をすることになます」

スポーツをしながら疲労骨折を防ぐには?

 スポーツは楽しいものですが、練習量が増えるほど疲労骨折の可能性も増えていきます。とはいえ、運動やスポーツが心身に良い影響をもたらすことが多いのも事実。スポーツを続けながら疲労骨折の危険を回避する方法はあるのでしょうか?

「一つは栄養不足にならないようにすること。これは非常に大事です。また試合などに向けて、運動量をアップする時に、急激に上げすぎず、段階を踏んで運動量を上げるよう計画的に練習プログラムを組みましょう」と石橋先生。

 また、下肢の疲労骨折の場合、O脚やX脚な下肢のアライメントが原因になることもあるので、アライメントを整えることを意識したり、シューズにインソールを入れたりするなどの対処も大切だそう。

疲労骨折を予防するために必要な栄養素3選

 新しい骨を作る「骨形成」と古い骨を壊す「骨吸収」がバランスよく行われるには、適切な血中カルシウム濃度を保つためのカルシウム量が必要です。カルシウムの効果的な補給には、体内吸収率の良い牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取する方法がおすすめです。

タンパク質

タンパク質に含まれるコラーゲンとカルシウムが結合することで丈夫な骨が作られます。体内で合成できない必須アミノ酸を含む肉・魚・卵・牛乳などを中心 にバランスよく摂取しましょう。

マグネシウム

体内に含まれるマグネシウムの 60~65%が骨の中に含まれています。カルシウムの摂取量に対してマグネシウムを1/ 2倍摂取すると体内でのバランスが良 いとされていますが、日本人は一般的にマグネシウムが不足しがちなので、豆 腐、納豆などの大豆製品、未精製の穀類(玄米など)を意識して摂るように心がけ ましょう。

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