スポーツ管理栄養士・テジンが伝授する食べる戦略:その7「40代以降に増える“こむら返り”の予防法 ―マグネシウムの“ちょい足し習慣”のすすめ ―」
一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の方の“食”を指導してきた管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、信頼できる食の情報を連載でお届けします。
夜中に突然ふくらはぎがつって目が覚めた、運動中にピキッとけいれん…。人によっては叫び声が出てしまうくらいの激痛の場合もあると思います。そんな「こむら返り」、皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか?
「こむら返り」はとくに夏場や運動後に多く発症し、また40代以降の方に多く発症すると言われています。こむら返りの原因は一般的に「水分不足」と言われていますが、実はそれだけではありません。
こむら返りとは?
まず、「こむら返り」の医学的な名称は「有痛性筋痙攣(ゆうつうせいきんけいれん)」です。つまり筋肉の痙攣のことです。特にふくらはぎ(“こむら”)の筋肉が痙攣する場合は、「腓腹筋痙攣(ひふくきんけいれん)」とも呼ばれます。
症状で言いますと、ふくらはぎの筋肉が異常に収縮し、緩まなくなる状態です。
■こむら返りの主な原因は?
主な原因は次のとおりです
1、汗によるミネラル不足
2、水分不足
3、急激な運動や冷え
4、筋肉疲労や血流低下
ではなぜ、40代以降の方に多く発症するのでしょうか。
40代以降に増える理由は?
40代以降の方に「こむら返り」が多いのは、次のようなことが考えられます。
1、筋肉量の減少
2、血流の悪化
3、消化吸収力の低下によるミネラル不足
加齢とともに筋肉減少や血管の老化と血流の悪化、そして、消化機能も衰え、さまざまなミネラルを取り込む力が低下。こうしてこむら返りを引き起こすのです。この中でも特に重要なのが、3の“ミネラル不足”で、とくにミネラルの1つ、「マグネシウム」の不足が問題になってくるのです。
マグネシウムは“筋肉を緩めるミネラル”
マグネシウムは筋肉の弛緩(緩める働き)を助けるミネラルです。
一方、カルシウムは筋肉を収縮させる役割があります。
筋肉がスムーズに「縮む・緩む」を繰り返すためには、カルシウムとマグネシウムのバランスが大切です。
目安はカルシウム:マグネシウム=2〜3:1が理想と言われています。
カルシウム=筋肉を縮める
マグネシウム=筋肉を緩める
(例:30〜49歳男性の推奨量:カルシウム750mg/日、マグネシウム370mg/日)
参考:日本人の食事摂取基準(2025年版)
汗をたくさんかくとマグネシウムが失われやすく、こむら返りの原因になります。
■ マグネシウムが多い食品(100gあたり)
食品 マグネシウム含有量 補足
ごま 360mg 大さじ1(6g)で22mg補給
アーモンド 290mg 10粒(15g)で44mg
くるみ 150mg 10粒(40g)で60mg
ひじき(乾燥) 640mg 水で戻すと8倍の重さになる
カットわかめ 1000mg 水で戻すと12倍の重さになる
玄米(炊いた後)49mg 白米の約6倍のマグネシウム
納豆 100mg 1パック(50g)で50mg
木綿豆腐 57mg 1/2丁(150g)で86mg
バナナ 32mg 1本(150g)で48㎎
豆類・種実類・海藻類はマグネシウムの宝庫です!
参考:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
おすすめの“ちょい足し”食べ方
ごま:すりごまでごはんやサラダに。吸収率アップ!
アーモンド・ナッツ:間食・おやつに。ヨーグルトと一緒も◎
海藻(わかめ・ひじき):汁物やサラダに。インスタントみそ汁にもOK
豆腐・納豆:食事に+1品で。たんぱく質も摂れて一石二鳥!
マグネシウムは吸収率も高め
マグネシウムは腸での吸収率が30〜50%程度と比較的高めなのも特徴です。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025年」
水分・塩分も忘れずに!
汗で失われるのはマグネシウムだけではありません。ナトリウム(塩分)カリウムもこむら返り予防に重要です。
日常は水+食事からミネラル補給
暑い日・運動時は経口補水液やスポーツドリンクの活用も効果的です。
【注意】たんぱく質の摂りすぎにも注意!
高たんぱく食も、水分喪失とミネラル不足の原因になることがあります。たんぱく質の代謝で尿量が増え、脱水傾向になりやすいのです。
マグネシウムを摂っても改善しない時は、たんぱく質量の見直しもポイントです。
■ まとめ
こむら返りはマグネシウム不足が原因の一つ
カルシウムとマグネシウムのバランスが重要
「ごま・ナッツ・海藻」の“ちょい足し”で手軽に予防
水分・塩分補給、たんぱく質バランスも意識!
夜中のつり予防、運動パフォーマンス維持のためにも、
今日から豆類・種実類・海藻類を意識的に食べてみませんか?
PROFILE
Tejin(テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。今はボクシングジムや大学ラグビー部で増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを行っている。また、競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を提供。執筆や講座出演も多数。