中高年が筋肉量を減らさずに体脂肪を落とす方法
一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の方の“食”を指導してきた管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、信頼できる食の情報を連載でお届けします。
私の職場であるスポーツジムに体験にいらっしゃる中高年の方は、そのほとんどの人が「痩せたい」、「体脂肪を落としたい」、「若い頃の体型に戻りたい」といったダイエット目的です。そして太った原因の多くは、「運動不足」だと言います。
その運動不足解消のために、「これから運動を始めよう」としているので、それはとても素晴らしいことではありますが、目的を実現するには、運動をプラスするだけではかなり難しいことです。結論から言えば、まず食事内容を見直して、適度な運動をプラスすること。これが重要です。その理由はズバリ、中高年が太る大きな原因の「筋肉量の低下」に着眼しているからなんです。
ここで中高年の筋肉の状況について見ていきましょう。
筋肉が減り始めるのはなんと30歳から。
人間の筋肉量は運動習慣がない場合、30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。
30代から:年に0.3〜0.8%ずつ減少
50代以降:減少ペースが加速し、年に1%以上減ることも
70代:「サルコペニア」(※)発症リスクが特に高まる
50代〜60代になると、若い時の筋肉量20%も減ってしまうことになりかねません。そして70代には「サルコペニア」を発症するリスクが高まるのです。サルコペニアとは、日本語で「筋肉減少症」のこと。加齢や活動量の低下により、筋肉量や筋力が減少し、身体機能が低下してしまう状態を指します。
筋肉は「動く力」はもちろん、代謝維持や生活の質(QOL)の向上にも深く関わる大切な組織です。中高年になって、筋肉の減少が著しければ、活動量が減少、代謝力の減少によって、脂肪がつきやすく、つまり太りやすくなりますし、さらに高齢者になれば筋肉減少による身体機能低下、寝たきり状態にもなりかねないのです。

中高年が筋肉を落とさずにダイエットする4つのポイント
さて、中高年の筋肉量低下の原因は、運動不足と、筋肉の材料となる“タンパク質不足”。これが二大要因です。ですから適度な運動をするのはとてもいいことですが、食事が非常に重要です。
ちなみに体重増減は「摂取エネルギー」(食事)と「消費エネルギー」(活動・運動)のバランスで決まりますが、痩せるために、やみくもに食事量を減らすだけでは健康的に痩せることはできません。
筋肉量の低下を防ぐための運動と食事を心がける。これが最大のポイントです。中高年の理想的な減量ペースは、月1〜2kg程度。そのうえで、次の4つのポイントを意識して見ましょう。
1、タンパク質は「朝・昼・晩」で分けてとる

筋肉の材料になるタンパク質は、1日まとめて摂るより、毎食に分けてこまめに摂るほうが効率的です。
・体重1kgあたり0.4〜0.5gが1食あたりの目安。
(例:体重60kgなら、1食で24〜30gが適量です)
具体的には、朝昼晩、納豆や卵、ツナ缶、豆腐、ヨーグルトなどを毎食、少しずつ組み合わせると、自然に達成できます。
2、炭水化物を抜かず、お米を選ぶ
「ご飯を抜けばやせる」というのは誤解です。極端な糖質制限は、かえって筋肉分解を招くこともあります。特におすすめは、白米や玄米などの“米食”です。お米は脂質が非常に少なく、白ごはん1膳(150g)あたり脂質はわずか0.3gほど。
一方、クロワッサンや菓子パン1個で脂質は20gを超えることもあり、知らずに脂質過多になる原因になります。
3、揚げ物や炒め物は控えめに
糖質やタンパク質が1gあたり4kcalに対し、脂質は1gあたり9kcalと高カロリー。脂質の摂りすぎがダイエットの停滞を招くことも。
そこで脂質を抑えたいときは、調理方法に注目しましょう。
脂質が多い順に並べると
揚げる > 炒める > 焼く > 煮る > 蒸す > 茹でる
おすすめは「煮る」調理法。
鶏胸肉やささみをトマト缶やスパイスで煮込むと、油を使わずにうまみたっぷり&しっとり仕上がります。パサつきにくく、味のバリエーションも広がります。
4、適度な運動を続ける
「筋肉は使えば維持できる」。これは中高年にもあてはまる大原則です。散歩、軽い筋トレ、スポーツなど、自分が“続けられる”運動を選びましょう。強度の高い運動は短時間で効果が出ますが、無理をすると続かない原因に。習慣化を最優先にしましょう。
まとめ
1.筋肉量を守ることは、健康的なダイエットやQOL(生活の質)向上のカギ
2.タンパク質は毎食とり、主食はお米で脂質を抑える
3.揚げ物・炒め物を控え、脂質の少ない調理法を選ぶ
4.無理のない範囲で運動を取り入れる
PROFILE
Tejin(テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。今はボクシングジムや大学ラグビー部で増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを行っている。また、競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を提供。執筆や講座出演も多数。