コラム 2025.06.09

スポーツ管理栄養士・テジンが伝授する「食べる戦略」その1『成長期のスポーツ選手はもりもり食べよう!』

一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の人の“食”を指導する管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、食の正しい情報を、本企画では連載でお届けします。

成長期のスポーツ選手が疲労骨折する理由は?

 先日、高校の部活動で陸上競技をやっているお子さんのお母さんから「食事のバランスはかなり気をつけているんですが、息子が疲労骨折をしてしまった」といわれました。実は最近、こういう成長期のスポーツ選手の疲労骨折の悩み相談が増えています。

 そのお母さんに詳しく話を聞けば、普段から骨を丈夫にするというカルシウムやビタミン、ミネラル、さらにタンパク質といった栄養に気をつけて、食事を作っているというのですが、それでも疲労骨折を繰り返してしまう……

 その背景には、ズバリ「エネルギー不足」があると考えられます。

 特に、「利用可能エネルギー」(Available Energy)が足りないと、骨や筋肉、ホルモンの発達がストップしてしまうのです。

「利用可能エネルギー(Available Energy)」とは、身体機能を維持し、活動するために利用できるエネルギーのこと。食事から摂取するエネルギーから、運動で消費されるエネルギーを差し引いた値が利用可能エネルギーです。

成長期のスポーツ選手の食事量は2人分!?

 スポーツを毎日行うような人は、一般の人より活動量が圧倒的に多いため、必要な摂取エネルギー量も多くなります。

さらに、小中高生のような成長期の子どもは、骨や筋肉の「成長分」のエネルギー量も必要です。つまり、成長期のスポーツ選手は「運動のためのエネルギー」+「成長のためのエネルギー」が必要であり、骨を丈夫にする栄養のカルシウム等も大切なのですが、そもそもトータルのエネルギー摂取量を増やすことが重要なのです。

 たとえば高校生のラグビー部員なら、1日に4,000~5,000kcal以上必要なこともあります。このエネルギー摂取量がアンダーになると、疲労骨折の原因になるのです。

利用可能エネルギーとは?

 繰り返しますが「利用可能エネルギー」とは、摂取エネルギーから基礎代謝(生きていくためのエネルギー)と運動などの消費エネルギーを引いた残りのエネルギーで、体の成長やホルモンが正しく働くために使われる大切なエネルギーです。このエネルギーが十分にないと、次のような影響が出ます。

・骨の再構築(リモデリング)低下

・筋肉の回復や修復の遅れ

・ホルモン分泌の抑制(例:無月経)

・疲労回復の遅れ・免疫力低下

 つまり、成長期のスポーツ選手はもちろんのこと、普段、ジムなどで運動をしている大人も、それに見合うエネルギー摂取を心がけておかなければ、結果的に不健康になるのです。

「骨折のリスク」はこんな時に高まる

 では、骨折のリスクが高い食習慣について紹介します。当てはまる人は要注意です。

 

・食事はおにぎりやサラダだけ

・添加物を控えるなどクリーンな食事を心がけつつ、脂質も減らしている

・プロテインなどの栄養補助食品に頼っている

・朝、食欲がなくて食べない、時間がないので食べない朝食欠食

・食欲がわかずジュースやお菓子で済ませる

・お酒をたくさん飲むので食事量を控えている

骨のために大事な3本柱

 骨折リスクを軽減させるために以下の3つをしっかり心がけてください。

    1:自分の運動量を加味した十分なエネルギー摂取(3食+補食)

    2:骨づくりに必要な栄養素(カルシウム、マグネシウム、ビタミンD・K、たんぱく質)

    3:休養と睡眠(成長ホルモンの分泌に関係)

 最後に、成長期のスポーツ選手やその親御さんたちの中に危険な思い込みがあることをお伝えしてきます。それは、「体脂肪減・痩せている」=「速い・軽い・スタミナアップ」という考えです。これは全くの誤解です。体脂肪が少ないからといって、運動のパフォーマンスは上がりません。しっかり食べて、動いて、寝る。そのバランスこそが「骨の強さ」につながり、運動パフォーマンスをアップさせるのです。

(文・Tejin)

 

PROFILE

Tejin(テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。今はボクシングジムや大学ラグビー部で増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを行っている。また、競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を提供。執筆や講座出演も多数。

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