インタビュー 2021.04.26

宇宙飛行士・山崎直子さんに聞く、宇宙での体験と運動器の重要性とは?【2/3】

日本人女性として史上二番目の宇宙飛行士となった山崎直子さん。2010年にスペースシャトルに搭乗し、国際宇宙ステーションに滞在した際の勇姿をご記憶の方も多いはず。今回は、山崎直子さんに、宇宙飛行士になるまでの道程と、運動器にまつわる考え方を伺いました。今回は【1】の続きです。

どうやって宇宙飛行士になる?

 宇宙飛行士になるための身体的な条件は、年を追うごとにどんどん変わっているんですが、2008年の募集の際の応募条件を例に出すと、身長が160〜190センチ余り。視力は矯正視力で1.0以上。最高血圧が140以下……などでした。

 テスト内容としては、筆記試験や面接、体力測定など様々です。ちなみに、テストではありませんが、訓練中の体力測定は米国とロシアで全然違います。例えばNASAではベンチプレスや腕立て伏せを1分間で何回できるか等を細かく見たりするんですが、ロシアは面白くて、懸垂が14回できるかどうかだけで総合体力を測ります。

©NASA  山崎直子/1970年千葉県生まれ。東京大学工学部航空学科卒業。同大学院航空宇宙工学専攻修士課程を修了後、宇宙開発事業団(現JAXA)に勤務。99年に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士候補に選ばれる。10年4月から15日間の宇宙飛行を行う。現在、内閣府宇宙政策委員会委員など

 

 合格して、宇宙飛行士の候補者に選ばれるわけですが、実際に宇宙に行くまでに、私は11年間、アメリカやロシアでトレーニングを積みました。約1年半に渡る基礎訓練を受け、正式な宇宙飛行士に認定されると、今度はアドバンスド訓練を1年半〜2年。

 さらに、打ち上げクルーに選ばれるのを待ちながら、技術を維持するための訓練を続けます。その後、具体的なミッションが確定した段階で、「ミッション固有訓練」という実地訓練を受けるわけです。

 基礎訓練だけでも、約1年半、約230科目、のべ1600時間を費やします。これには、工学やサイエンス関連の授業はもちろん、サバイバル訓練も含まれます。宇宙飛行士の場合、二重・三重に起こる不測の事態に備える必要があり、その訓練がハードでしたね。

 例えば、宇宙から戻ってカプセルで海や雪山に不時着した場合に備え、救助されるまで耐え抜くサバイバル訓練。水上サバイバル訓練では、ヘリに救助されてめでたし、ではありません。今度は視界ゼロの夜間にヘリが海に墜落した場合も想定します。だから目隠しをして、水に沈むヘリから脱出するような訓練もあります。

 本番を想定して訓練するので、もちろんハプニングは起こります。宇宙に出てからも同じですが、周りの仲間と団結して問題に対処します。地上からサポートしてくれる管制官たちも含め、互いの信頼関係でトラブルを乗り越えていきますね。

 実は今年の秋に、13年ぶりに日本で宇宙飛行士が募集されます。理系に限らず、文系や短大などに広げることを検討中です。ヨーロッパでも、同時期に宇宙飛行士が募集されるんですが、身体が不自由な方も応募できるようです。

 あらゆるタイプの人が宇宙に行く未来に備え、宇宙開発も“多様性”がキーワードになってくると思います。

画像はすべて©NASA / 取材・文◎田代智久

 

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