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整形外科医のエッセイ「骨の不思議」

 

 人間には約200個の骨があります。骨は大黒柱として生体を支えていると同時に、カルシウムの貯蔵庫として働いています。

 太ももの骨である大腿骨は長管骨と呼ばれ、太ももの部分で輪切りにすると、その切り口は骨が詰まった円柱ではなく中空の円筒状になっていることをご存じですか? 中が詰まった円柱よりも、筒状になっている方が人間にとって有利なのでこのような形になっているんです。

 動物は軽くて動きやすく、なおかつ丈夫な手足を持っている必要があります。円筒形の骨は円柱に比べて全体の重さを増やさないで、曲がりにくい構造にすることができます。そこで、大腿骨など手足の長管骨が筒状に作られ、体を支えていると考えられています。

 子供から大人になると成長が終了し、骨の長さは変わらなくなります。けれども、骨の直径はその後も大きくなっていきます。例えば大腿骨は歳を取るほど太くなっていて、少しでも骨の強度を保つために私たちの体に備わっている骨の働きと考えられています。

 この骨は毎日、部分的に入れ替わっています。古くなった骨や、小さな傷が入った骨が壊されて、そこに新しい骨が作られているのです。1年間に2~8%の骨が新しい骨に入れ替わっていて、骨の健康が保たれています。

 運動すると骨が丈夫になるという話をよく耳にしますが、骨に対する荷重が、骨を作る働きに深く関わっています。ジャンプ競技やバレーボールなど体重が骨に加わる運動をするスポーツ選手の骨密度は高いことが知られています。

 その一方で、骨に荷重が加わらないと、骨の細胞がそれを感知して、骨を作る作用を低下させ骨は減少します。その代表例が宇宙飛行士です。宇宙は微小重力の空間ですので、そのなかで生活すると、骨密度が減少するのです。将来、たくさんの人が宇宙に出て行ったり、長期間の滞在をしたりするようになると、この骨の減少の予防が重要だと言われています。

 ところで、不思議なことに、全身の骨の中でも、宇宙に滞在しても骨密度が減少しない部分があります。それは頭蓋骨です。なぜ頭蓋骨だけ骨が減らないかの理由はまだ十分には解明されていませんが、普段、荷重が加わっていない骨は、宇宙空間で微小重力になってもその影響を受けないと考えられています。

 ヒトは歩いたり走ったりするときに頭に荷重を加えていません。頭を地面につけて動くことはないからです。これに対して、下肢の骨や背骨など体を支えている骨は、宇宙に滞在すると減ってしまいます。地上で生活している私たちにはいつでもどこでも重力が働いていますので、適度な荷重運動で骨に刺激ある生活を心がけてください。

文・荻野浩(鳥取大学医学部保健学科教授)