コラム 2023.09.01

栄養のプロが伝授する40〜50代の筋肉や骨の老化を止めるためにの栄養素と、外食での賢い食べ方

日々、適切な栄養素をしっかりとれているでしょうか? 人がいつまでも健康で長生きするため、また病気にならないためには、正しい栄養素を日々の食事からしっかり摂取する必要があります。

とはいえ働き盛りの40〜50代は、健康が気になりつつもランチは外食か弁当が多くなりがちで、バランスの良い食事をとるのが難しい世代。

でも、そんなことは言っていられません。なぜならこの年代は、筋肉、骨、神経といった運動器が加速度的に衰え、そのまま食事や運動を意識しなければ、カラダの不調がそのまま老後に響いてくるからです。

そこで今回は、女子栄養大学栄養学部教授の上西一弘先生に、日々の外食・ランチ時のメニューの選び方と栄養摂取の心得、そして欠乏しがちな栄養素の補い方について教えてもらいました。(以下、上西先生・談)

単品ではなく定食を。そしてできるだけ毎日違うものを食べる

栄養バランスを考えた料理を食べるべきだとは思いつつ、昼はどうしても外食(お弁当)ばかり、という40〜50代の方は多いと思います。

しかし、外食や弁当が全部ダメ、ということは決してありません。いくつかのポイントさえ押さえれば、栄養は十分とることができます。

まず前提として、外食は揚げ物が多く、脂質や糖質が多いことは自覚しておきましょう。そしてうどんやラーメン、丼モノのような単品メニューではなく複数のおかずで構成された定食を選ぶことが重要。そして何より、いくら好きな食べ物があったとしても、同じものばかり続けて食べないことです。

例えば蕎麦を食べる際も、「もり」や「かけ」で済ますのではなく、そこに卵をプラス。卵1個でたんぱく質が6.2gとれます。たんぱく質は筋肉をはじめ、髪や爪、皮膚の元となる栄養素。ちなみに卵はビタミンやカルシウム、鉄も含んでいるので、一石何鳥にもなります。

また、今日からあげ定食(弁当)を食べたら、翌日はビタミンDが豊富な焼き鮭定食(弁当)にする、といった具合に、常に一週間単位で考えて、栄養バランスを偏らせない工夫を。お弁当も同様に、毎日同じおかずはNG。バラエティに富んだ具材で構成しましょう。

プラスαの栄養素:骨や筋肉を強くするたんぱく質とカルシウム

もう一つのポイントは、外食では足りなくなりがちな栄養素をプラスαで補うことです。

とくにたんぱく質やカルシウムが豊富な乳製品は、外食で摂取しにくい栄養素を手軽に取ることができる食品の一つ。将来的なロコモティブシンドローム(移動能力の不足・衰え)対策や寝たきり対策のためにも、カルシウムで骨を強くしておくべきです。

女性の場合は閉経後に骨密度が減少するので特にカルシウムが大事。牛乳はもちろん、ヨーグルトやチーズ、最近コンビニやスーパーなどで売っているプロテイン飲料などを、外食に上手にプラスしましょう。

■カルシウムを多く含む食材例

牛乳・乳製品、ヨーグルト、チーズ、干しエビ、しらす干し、豆腐、納豆、モロヘイヤ、小松菜

■たんぱく質を多く含む食材例

マグロ、カツオ、鮭、牛赤身肉、鶏ささみ、豚ヒレ、納豆、卵、チーズ

プラスαの栄養素:ビタミンD

そしてもう一つ、意識してとりたいのがビタミンDです。これは主にカルシウムの吸収を助け、骨や歯に沈着させて丈夫にしたり、血中や筋肉のカルシウム濃度を保ってくれる栄養素です。

また最近では免疫力を高める効果もあることがわかってきています。ビタミンDの栄養状態が良い人のほうが新型コロナにかかりにくく、重症化もしにくいという論文が多く発表されており、改めてビタミンDに注目が集まっているのです。

このビタミンD、実は日本人の多くが欠乏状態と言われています。食物だと一番の供給源は魚です。また日光(紫外線)に当たることで皮膚でも作られます。しかし日本人の魚の摂取量が減ったこと、そして過剰に紫外線を気にして日光に当たらない人が増えたことも、欠乏を招いている原因と思われます。

だから外食やお弁当では、積極的に魚を選んでほしいですね。肉は家でもよく食べるでしょ? アジやサバ、サンマもいいですが、優秀なのは鮭。ビタミンDが特に多いので、鮭弁当や鮭定食などが特にオススメです。

焼き魚や煮魚、調理法は何でもOK。週に2〜3回、80gほどの切り身を食べれば、必要十分な量のビタミンDがとれます。だからおにぎりを買う時も、鮭がオススメですね。もしどうしても外食で魚が食べられない場合は、サプリで補うのもアリです。ただし、専門家に相談してから使用することをお勧めします。

そして1日15分でいいので、体の一部を日光に当ててビタミンDを作りましょう。日焼けが気になるのであれば、顔や首はガードしたうえで、腕や脚の一部を当てれば大丈夫です。

■ビタミンDを多く含む食材例

イワシ、あん肝、ウナギ、サンマ、カレイ、タチウオ、ブリ、しらす干し、舞茸、乾燥きくらげ

プラスαの栄養素:疲労回復のビタミンB群

このほか、ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンの8種類)も重要です。

主に摂取した糖質や脂質がエネルギーとして使われる際に必要になる栄養素で、夏バテや疲労が抜けない時に大いに活躍してくれます。

主に肉(豚肉の含有量が多い)と野菜で構成されるおかず、例えばレバニラ炒め、回鍋肉のような料理はすべからくビタミンB群を多く含んでいるのでオススメ。

和食でいえば、ランチ時は難しいでしょうが、やっぱり鍋がいいですね。豚しゃぶなんて、肉と野菜を一緒にたっぷりとれるので最高です。そして野菜はなるべく緑黄色野菜をとるのがよいでしょう。

上西一弘(うえにし・かずひろ)/女子栄養大学栄養学部教授。専門はヒトのカルシウムの吸収・利用に関する研究、成長期のライフスタイルと身体状況についてなど。また、スポーツ選手の栄養指導も行う。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある

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