特集 2023.09.01

少年野球選手の“肩と肘”を守る「シーズンオフ」の重要性とは?

試合をしない「シーズンオフ」は、少年野球の選手にとって全力投球を控え、肩肘を休めるための大事な期間。この期間が短い選手は、肩肘の障害を起こしやすくなります。本記事では、改めてシーズンオフの重要性にクローズアップします。

日本初となる全国規模の「中学野球の実態調査」が行われたのは2016年。この調査で、中学生の野球少年たちの具体的な投球数、練習時間、試合数、シーズンオフの数字が明らかになると同時に、選手たちの肘や肩の障害の状態も浮き彫りになりました。

肩肘とシーズンオフの関係

この調査結果について整形外科のドクターが分析した結果、野球障害を予防するためのさまざまな「数字」が出され、『野球障害を防ぐための10の提言』がまとめられました。それが上の10項目です。

なお、調査によれば中学野球選手が痛みを感じる部位の1位は「肩」28.3%、2位「肘」17.8%。野球が肩肘を痛めやすいスポーツだというのは以前からわかっていたことですが、この調査により、「野球における肩肘の障害は、全力投球数に比例して増える」ということが明らかになったのです。

全力投球は、練習や試合数が増えれば比例して増えます。つまり「シーズンオフ」が少ないとそれだけ試合数が増えるので、全力投球数が増え、肩肘の障害も増えると予測できます。

グラフのデータは2016年9月から2017年2月まで、日本整形外科学会、全日本野球協会の協力のもと、運動器の健康・日本協会が実施したもの。軟式野球は日本中学校体育連盟加盟チーム、硬式野球は国内の5団体に加盟するチームから回答を得た。調査は中体連が47都道府県で各10チーム、硬式部は加盟チームの約5%を対象とした。(計489チーム)

実際に、調査では、肩肘の痛みを感じた選手の中で、もっとも高い割合を示したのが「シーズンオフが2カ月以下」30・7%でした。3カ月以上になると痛みを感じる選手の割合が減ることから、提言では「シーズンオフを少なくとも3カ月以上」と示しているわけです。

シーズンオフ=肩肘を休める期間

シーズンオフが短いということは、言い換えれば、肩肘を休める期間が短くなることを意味します。肩肘は、疲労してもきちんと休むことで回復します。もし痛みを感じた場合でも、初期段階で痛みを感じる動作をやめ、安静にすれば修復しやすいのです。

しかし疲労が重なったり、痛みを感じても十分に安静期間をとらないと、関節内の組織の痛みが進行し、修復に時間がかかったり、最悪の場合、関節内の組織が壊れて、肩肘に障害が残る場合もあるのです。

そこで、シーズンオフの重要性をいま一度、再認識し、3カ月以上の期間を設けるようにしましょう。

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