運動会や持久走シーズンに向けて上手く走るためのコツを伝授! ーBJJ学校保健委員会presentsー
速く、かっこよく、走れたら……。これ、子どもも大人も永遠の憧れですよね。今回は、そんな「上手く走るコツ」について、高崎健康福祉大学保健医療学部 理学療法学科の理学療法士・中川和昌先生が、解説してくれます。親子で練習してみてください。
2学期が始まり、少しずつ秋が近づいてきました。秋といえば……「食欲の秋」「芸術の秋」など、いろいろありますが、やっぱり「スポーツの秋」! 運動会や持久走大会など、走る機会が増える時期でもあります。「少しでも速く走れるようになりたい!」、「最後まで疲れずに走りたい!」、そんな子どもたちも多いのではないでしょうか。
上手に走れるようになることは、自信につながります。また、無理のない効率的な動きを身につけることは、疲れにくく走ることや、けがの予防にもつながります。
運動会などの短距離走と、持久走では走り方は異なりますが、今回はどちらにも共通する「楽に、スムーズに身体を動かすための基本」と、走る前に家庭でも簡単にできる運動を紹介します。
まずは「速く」よりも「楽に走る」ことを意識しよう
走り方には、さまざまなポイントがあります。
ただし、最初から全部を意識して走ろうとすると、かえって身体に力が入り、動きが硬くなってしまいます。まずは一つずつで大丈夫です。「力を抜いて、楽に、スムーズに走る」、ことを意識してみましょう。一つのポイントを意識するだけで、走り方全体が変わることもあります。
もちろん、走る前には十分な準備運動を行うことも大切です。特にこれから寒くなる季節は、身体が温まっていない状態で急に走り始めないようにしましょう。準備運動については、以前紹介した「体育授業のけがを防ぐ準備運動のコツ」(🈁をクリック)を参照してください。
上手く走るための3つのポイント
まず、下の写真を見比べてみてください。どちらの走り方が走りやすそうですか?

図1 好ましいランニングフォームと好ましくないランニングフォーム
- 腕は「まっすぐ・リラックスして」振る
- 身体はまっすぐ!「足の上に身体を乗せる」
- 足は「高く上げる」より「素早く戻す」
少し極端な例ですが、左のフォームの方が「楽に、スムーズに走れそう」と感じるのではないでしょうか。ここでは、走るときに意識したいポイントを3つと、その練習方法を紹介します。
Point①腕は「まっすぐ・リラックスして」振る
「腕をしっかり振って!」、と声をかけられた経験はありませんか?腕を振ることは、走るときにとても大切です。ただし、腕に力を入れすぎて、思いっきり振ればよいわけではありません。力が入りすぎると疲れやすくなり、腕が左右に大きく動いてしまうと、身体を前に進める動きの邪魔になることもあります。
ポイントは、「力を抜いて、前後にまっすぐ振る」ことです。
「Good!」の腕振りをやってみよう
腕を軽く曲げ、親指を立てて「Good!」のポーズを作ってみましょう。そのまま、脇を大きく開かずに、腕を前後に軽く振ってみます。
ポイントは、「肩に力を入れない」、「脇を開きすぎない 」、「腕を左右ではなく前後に振る 」、「頑張って振る、のではなく、リラックスして振る 」、ことです。
まずはゆっくり。上手にできたら、少しずつ腕を振るスピードを上げてみましょう。
「速く振る」よりも「力を抜いてスムーズに振る」ことがポイントです。

図2 Good!腕ふり
Point②身体はまっすぐ!「足の上に身体を乗せる」
次のポイントは、身体の軸です。
走るときには、頭から身体、足までが安定していることが大切です。腰が大きく曲がったり、身体が左右にフラフラしたりすると、せっかくの力がうまく前に伝わりません。また、身体が安定すると、先ほど紹介した「腕をまっすぐ振る」こともしやすくなります。まずは、走る前に「まっすぐ立つ」練習から始めてみましょう。
身体の「まっすぐ」を作る
最初は動かずに、両足でしっかり立ってみましょう。
頭・背中・腰が大きく曲がらず、身体の軸がまっすぐになっていることを意識します。
「動きながらまっすぐ」を作るためには、まず「止まった状態でまっすぐ立つ」ことが基本です。

図3 まっすぐトレーニング
左:支える足から、まっすぐ伸ばした手の先を見るように、まっすぐを維持
中:維持できるようになったら、肘を膝にタッチするように下げてきて(膝の位置はそのまま)、また伸びた状態に戻る
右:良くない例。腰が横にブレたり、身体が曲がったりしないようにしましょう。
前に出した足の上に身体を乗せる
少し高さのある台や、階段の段差などを利用してみましょう。片足を台に乗せた状態から、身体を「グッ」と持ち上げます。そのとき、「足の真上に、腰・身体・頭が乗っている」、状態を意識してください。勢いよく身体を持ち上げても、身体が左右にブレないようにするのがポイントです。
※ 安全のため、はじめは転倒しないように安定した場所で、大人が見守りながら行いましょう。

図4 前足の上に乗せるトレーニング
右:良くない例。腰が曲がらないようにしましょう。
Point③足は「高くあげる」より「素早く戻す」
最後は足の動きです。走るとき、「足を高く上げよう!」と意識していませんか?実は、足を高く上げることだけを意識する必要はありません。足を無理に高く上げようとすると、身体のバランスを崩したり、余計な力が入ったりすることがあります。
そこで、「足を上げる」よりも「素早く戻す」、ことを意識してみましょう。身体を少し前に傾け、体幹をまっすぐに保ちながら、その場で軽く足踏みをします。「トントン、トントン」と、足を素早く地面に戻すイメージです。足を素早く下ろすことで、次の一歩をスムーズに出しやすくなります。
壁を使って練習してみよう
壁に両手をつき、身体を少し前に傾けます。
頭から足までが大きく曲がらないように姿勢を保ちながら、その場で足踏みをしてみましょう。
最初はゆっくりで構いません。
慣れてきたら、少しずつ足踏みのテンポを上げてみましょう。

図5 壁を使った足踏みトレーニング
体をまっすぐのまま、少し前に倒して両手で支える
→ そのまま足踏みを。素早く戻す、を意識しましょう!
3つのポイントを走りにつなげよう
今まで挙げたポイントを意識して、いきなり全力で走り始めるのではなく、身体を少しずつ走る動きに慣らしていきましょう。例えば、早歩き → スキップ → 軽いジョギング → ランニング、というように、少しずつ動きを大きくしていきます。
その際に、これまで紹介した、「身体の軸をまっすぐ保つ」、「腕をリラックスして前後に振る」、「足を素早く下ろす」、というポイントを一つずつ意識してみましょう。
まとめ
「上手く走る=頑張って力を入れる」ではありません。走る練習というと、「もっと速く!」「もっと頑張って!」と力を入れることをイメージしがちです。しかし、力を入れすぎると、かえって動きが硬くなってしまいます。まずは、「力を抜いて、楽に、スムーズに」、を目標にしてみてください。
最初からすべてを完璧にする必要はありません。「今日は腕振りだけ」、「次は身体の姿勢を意識してみよう」、というように、一つずつ取り組んでみましょう。そして、少しずつ自然にできるようになってきたら、実際に走ってみます。
運動会や持久走大会を、「速く走らなければ」とプレッシャーに感じるのではなく、自分の身体を上手に動かす練習の機会にしてみてはいかがでしょうか。「前より少し楽に走れた!」、「去年より長く走れた!」、そんな小さな変化も、子どもたちの自信につながります。
文・中川和昌(高崎健康福祉大学医療学部理学療法学科 教授/公益財団法人運動器の健康・日本協会 学校保健委員会 委員) モデル・中川結芽(小学6年生)
- 次回の記事は「冬季に増える体力低下・姿勢悪化への対策としての運動紹介」を予定しています(11月予定)
PROFILE
中川和昌 高崎健康福祉大学保健医療学部 教授 (公財)運動器の健康・日本協会 学校保健委員会 委員