『食欲の秋』は本当に太りやすい?秋の食欲と体重管理
一般競技者からトップアスリートまで、さまざまな選手や一般の方の“食”を指導してきた管理栄養士・健康運動指導士のTejin(テジン)先生による、信頼できる栄養情報を連載でお届けします。
秋になると、さつまいもや栗、果物、さんまなど、おいしい旬の食材が増えてきます。夏の暑さが落ち着いて食欲が戻り、ついつい食べ過ぎてしまう人もいるのではないでしょうか。
秋は本当に太りやすい季節なのでしょうか。
体重管理というと、食べる量やカロリーを減らすことに意識が向きがちです。しかし、食事の内容や栄養バランスも大切なポイントです。
今回は、秋に食欲が増える理由や旬の食材の栄養的なメリットを紹介しながら、秋の味覚を楽しみつつ体重を管理するための食べ方を解説します。
なぜ秋は食欲が増えやすいのか?夏の暑さが落ち着き、食欲が戻る

夏は暑さによって食欲が落ちたり、冷たい麺類など、食べやすいものに食事が偏ったりすることがあります。
秋になって気温が落ち着くと、夏に低下していた食欲が戻り、食事をおいしく感じるようになる人もいます。
また、さつまいもや栗、果物、魚など、旬の食材を楽しむ機会が増えることも、秋の食事に変化をもたらす要因の一つです。
秋の味覚はたんぱく質が少ない?食事バランスと食欲の関係

プロテインレバレッジ仮説とは?
体重管理を考えるうえで、知っておきたいのが「プロテインレバレッジ仮説」です。
これは、ヒトは食事中のたんぱく質摂取量を比較的強く調節する傾向があり、食事全体に占めるたんぱく質の割合が低いと、炭水化物や脂質など、たんぱく質以外からのエネルギー摂取量が増え、結果として総エネルギー摂取量が増加する可能性があるという考え方です。
ヒトを対象とした実験研究でも、食事に占めるたんぱく質の割合を15%から10%に下げた条件で、総エネルギー摂取量が約12%増加したことが報告されています。ただし、食欲やエネルギー摂取量はさまざまな要因によって変化するため、たんぱく質の割合だけで食べ過ぎや肥満を説明できるわけではありません。
同じ100kcalでも、たんぱく質の量は違う
秋に食べる機会が増えるさつまいもや果物は、炭水化物を摂取できる一方、たんぱく質の供給源としては量が限られます。
実際に、同じ100kcal分を食べた場合、たんぱく質はどのくらい摂れるのでしょうか。
食品ごとのたんぱく質量(100kcalあたり)
※文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」のエネルギー・たんぱく質量から算出した概算値です。食品の品種や調理方法などによって数値は異なります。
上記のように、さつまいもや果物は、同じカロリーで比較すると、米や麺類に比べてたんぱく質が少ないことが分かります。一方、栗やじゃがいもは白米ご飯よりたんぱく質が多く、食品によって違いがあります。
さつまいもや果物を食べること自体は問題ありません。しかし、こうした食品だけで食事を済ませたり、たんぱく質を含む食品が少ない食事が続いたりすると、食事全体のたんぱく質が不足しやすくなります。
体重管理では、カロリーだけでなく、たんぱく質・脂質・炭水化物(PFC)のバランスにも目を向けることが大切です。
秋の味覚は避ける必要なし!栄養面のメリットにも注目!
旬の食材からビタミンや食物繊維を摂る

秋の食材には、炭水化物だけでなく、健康維持に役立つビタミンやミネラル、食物繊維などを含むものも多くあります。
例えば、さつまいもには食物繊維やビタミンC、かぼちゃにはβ-カロテン、果物にはビタミンCなどが含まれています。
こうした栄養素は、身体の正常な機能を維持するために必要です。ビタミンAやビタミンCなど、免疫機能の維持に関わる栄養素を摂取するうえでも、さまざまな食品を組み合わせることが大切です。
秋鮭やさんまから、たんぱく質も摂ろう

秋の食卓では、さつまいもや果物などに加えて、魚も積極的に取り入れたい食品です。
秋鮭やさんまなどの魚は、たんぱく質を摂取できるだけでなく、種類によってビタミンDやEPA・DHAなどのn-3系脂肪酸も含まれています。
例えば、さつまいもを食べるときに卵やヨーグルトを組み合わせたり、栗ご飯に焼き魚や野菜料理を添えたりすると、食事全体の栄養バランスを整えやすくなります。
旬の食材を楽しむことと、たんぱく質をしっかり摂ることは両立できます。
秋の食欲と上手に付き合う3つのポイント

1.毎食、たんぱく質源を取り入れる
秋鮭やさんま、肉、卵、納豆、豆腐、ヨーグルトなどを、食事に合わせて取り入れましょう。
さつまいもだけで食事を済ませるのではなく、卵やヨーグルトなどを組み合わせる。栗ご飯なら、焼き魚や豆腐料理などを主菜にする。
こうした工夫によって、たんぱく質を確保しながら食事全体のバランスを整えられます。
2.旬の食材は「追加」だけでなく「置き換え」も意識する
旬の果物やさつまいもを食べること自体が、体重増加につながるわけではありません。
一方で、普段の食事を変えずに間食やデザートを追加し続けると、摂取エネルギーが増える可能性があります。
例えば、お菓子の一部を果物に置き換えたり、さつまいもを主食や間食として食べる日は、ご飯などとの量を調整したりする方法があります。
大切なのは、特定の食品を禁止することではなく、食事全体で量とバランスを調整することです。
3.運動しやすい秋に身体を動かす
暑さが落ち着く秋は、ウォーキングやランニングなどの屋外活動を取り入れやすい季節です。
食事だけではなく、日常の活動量を確保することも体重管理の一つの方法です。
休日に散歩をする、ひと駅分歩く、定期的に運動するなど、自分の生活に合わせて身体を動かす機会を増やしましょう。
秋の味覚を楽しみながら、PFCバランスを整えよう
秋は旬のおいしい食材が増え、食欲も戻りやすい季節です。しかし、秋だから必ず太るというわけではありません。
大切なのは、カロリーだけに注目するのではなく、たんぱく質・脂質・炭水化物のバランスを意識することです。旬の食材を楽しみながら、食べる量や組み合わせを工夫し、運動する習慣も取り入れましょう。
「食べない」のではなく、「バランスよく食べて、しっかり動く」。
秋の味覚を楽しみながら、無理のない体重管理を目指してみてはいかがでしょうか。
参考文献
・Testing protein leverage in lean humans: a randomised controlled experimental study – PubMed
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
申泰鎮(シン・テジン)
管理栄養士・健康運動指導士。高校時代のボクシング経験をきっかけにスポーツ栄養士を志す。現在はボクシングジムや大学ラグビー部で、増量・減量・コンディショニングに対応した栄養サポートを実施。競技者から一般層までを対象に、食事・サプリメント・体づくりに関する実践的な支援を行う。執筆や講演活動も多数。