インタビュー 2021.12.02

管理栄養士・本多京子さんが語る「料理と体と運動の関係」ー料理をするために台所に立つだけで体は鍛えられますー

自分のために料理する

 

 歳を重ねると、家族のかたちも当然、変わってきます。子どもが独立したり、配偶者に先立たれたり。私もその両方を経験しました。いろんな理由で一人になったシニア世代が、料理をする気力を失ってしまう、というのはよく聞く話ですが、私は毎日食事を作っています。

 なぜできるの? とよく聞かれるんですが、答えはカンタンです。いま私は人のためではなく、自分のために料理しているから。だって、よぉく考えてみてください。髪も爪も皮膚も、すべて食べたものでできていますよね。だから自分で食べるものは自分で料理したいし、どこの誰が作ったのかわからないものを食べて自分を作りたくないんです(笑)

 そもそも私が料理を始めたのは、実家が染物屋だったからです。扱うのが高級品なので、お客さんが来ると、商談が長引くこともしばしば。で、必然的に両親ともに遅くまで働くことになり、忙しい日は晩ごはんの時間がすごく遅くなるわけです。妹もお腹をすかせているし、母も仕事終わりでクタクタ。

 そこで、小学1年生だったある日、私が夕飯を作ろう、と思ったんです。最初に作ったのは、ご飯と味噌汁、それと唯一作り方を知っていた目玉焼き。そしたら母が「本当に助かる」と喜んでくれて。「じゃあ、毎日やってみるか」と、晩ご飯は私が担当することになりました。いつも目玉焼きだけじゃ飽きるので、母が定期購読していた主婦雑誌の付録に載っていたレシピを参考にしてレパートリーを増やしたりして。料理に使う難しい漢字もそのときに覚えましたし、自分で買い物に行くことで算数もできるようになりました。結局、私が大学を卒業して家を出るまで、20年近く晩ご飯を作り続けましたね。

 

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