インタビュー 2022.03.03

気鋭の写真家・越智貴雄が義足の人を撮る理由。

一眼レフを相棒に一人旅

被写体と会話しながら和やかに撮影する

 

 初めて手に入れた自分の一眼レフは、高校生になって買ったニコンのF50Dという機種でした。実は小学5年生くらいから、一人で自転車や電車に乗って知らない町に出かけて旅して回るのが好きだったんですが、そこで見た風景を記録したいな、という気持ちが湧いてきて。

 でも当時、一眼レフは一番安いものでも6万〜7万円。小学生の頃から貯めていたお小遣いでは到底足りず、親にお願いしてみたら、次の中間テストで95点以上取れたら残金を払ってあげる、と言われました。で、猛勉強したら、なんと100点満点が取れまして。満点なんて後にも先にもその時だけでしたけど(笑)。とにかく初めての自分だけのカメラを持つことができました。

 それからは、その一眼レフと一緒に、普通列車などが5日間乗り放題になる「青春18きっぷ」を使って、大阪から九州や東北まで旅して回りました。撮影していたのは主に旅先の風景ですが、やがてコンテストに応募しようと思いつきました。

 初めて応募したのは、年に1度だけ開催される大きなフォトコンテスト。山形県の月山で撮った花の写真を提出したところ、思いがけず佳作に入選しました。ものすごく嬉しくて、以来、毎月カメラ雑誌の写真コンテストに挑戦するようになると、そのうち出すたびに何らかの賞をいただけるようになって。これが写真家としての自分のルーツですね。

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