インタビュー 2022.03.03

気鋭の写真家・越智貴雄が義足の人を撮る理由。

撮られるのが嫌いな子

車いすのアスリートにカメラを向ける越智さん

 

 幼少期からスポーツは常に身近にありました。というのも、育ったのが大阪の南河内にある藤井寺市。ご存じのように、当時は近鉄バファローズの本拠地である藤井寺球場があったんですね。だからシーズン中はナイターの歓声が街中にこだまして、子どもたちは例外なくバファローズのファン。僕も含めて、体感で9割近くの小学生が少年野球をしていたんじゃないかと思います。

 写真を撮り始めた理由ですか? 意外に思われるかもしれませんが、実は子どもの頃は写真を撮られるのが大嫌いだったんです。とにかく内気でおとなしくて引っ込み思案な性格だったのと、太っていたこともあって、自分が写真に写るのがすごく苦手だったんですね。だから小学生の頃は友達の後ろに隠れて、肩越しにピースサインだけ出すような子どもでした。

 でも中学生に上がった頃でしょうか、ふと気づいたんです。「自分が撮れば写らずに済むぞ」と(笑)。それ以来、家族や友達と写真撮影する場面になったら、すかさず「僕が撮るよ」って立候補するように。こうして“撮られる苦しみ”から解放されると同時に、撮影するとすごく喜んでもらえることもわかったんですね。「写真、うまいね」なんて褒められたりすると嬉しくて、嬉しくて。

 それまで学校の授業では恥ずかしくて挙手もできないような、もうホントに内向的で争いごとが嫌いなタイプだったんですが、生まれて初めて自分が得意なことを見つけた気がしました。

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