特集 2026.07.13

3:ゴルフ腰痛は「腰を回す」前に体の使い方を見直そう ~整形外科医が教える、スコアにも腰にもやさしい関節別ストレッチ&体幹コントロール~ 【3】腰を固めず、体幹をしなやかに安定させる!

腰に多少の痛みがあっても、プレーせずにはいられない――。そんなゴルファーは少なくありません。読者の中にも、腰に不安を抱えながらゴルフを続けている方がいるのではないでしょうか。

このシリーズでは、腰痛治療と運動療法のスペシャリストとして数多くの腰痛患者や腰痛ゴルファーを救ってきた整形外科医・松平浩(まつだいら・こう)氏に、腰にもスイングにもやさしいアドレス・身体の使い方について、医学的・運動学的な視点から全3回にわたり解説してもらっています。

前回は、ゴルフスイングにおける股関節の役割について解説しました。ジョイントバイジョイント理論で考えると、股関節は胸椎と同じく、モビリティ、つまり可動性を担う部位です。

最終回となる第3回のテーマは、腰椎の適切なスタビリティ、つまり安定性です。

「ただし、ここでいう安定性とは、単に腹筋や背筋を鍛えて腰まわりを固めるという意味ではありません」(松平氏・以下同)

 では、腰椎の適切なスタビリティとは、何を意味するのでしょうか。

 松平氏がキーワードとして挙げるのが、「モーターコントロール(MC)」という概念です。

 MCとは、必要な筋肉が、必要なタイミングで、必要な分だけ働くように身体を調整する能力のことです。少し専門的な説明になりますが、腰まわりでいえば、お腹側の腹横筋や背中側の多裂筋といった深層筋、いわゆるインナーマッスルが適切なタイミングで働き、骨盤と腰椎のよい位置関係を保ちながら、股関節や胸椎の動きと自然に連動することが大切です。

 平たく言えば、アウターマッスルで力任せに固めるのではなく、“インナーマッスル・ファースト”で身体を安定させる動きと考えるとわかりやすいでしょう。

アドレス時に、丹田を意識し“腹横筋ファースト”を感じてみる

 アドレス時、丹田、つまりへそから指3〜4本下あたりを軽く意識します。上半身は力まず、グリップも強く握りすぎないようにしながら、クラブヘッドのソールで芝や地面をごく軽く押してみましょう。

 自覚しにくいかもしれませんが、このときお腹の奥が軽く反応する感覚があれば、腹横筋が働くきっかけになります。力いっぱい押す必要はありません。むしろ、軽い刺激に対してお腹の奥が自然に反応する感覚をつかむことが大切です。

 一方で、この“腹横筋ファースト”の感覚をつかむのは、正直、簡単ではありません。モーターコントロールを身につけるうえでは、自分の骨盤や腰椎がどのような位置にあるのかを感じ取り、適切なアドレス姿勢を再現できるようにすることも大切です。

 そのための補助として、骨盤周囲を軽くサポートするツールを活用する方法もあります。たとえば「松平式骨盤ベルト」のように、腹横筋の働きを意識しやすく、動きを妨げにくい設計のベルトは、モーターコントロールを学ぶ際の手がかりとして参考になるかもしれません。

多裂筋を働かせるエクササイズ

 次に、腰椎の安定性に関わるインナーマッスルの一つである多裂筋を働かせる、松平式の【インナーマッスル体操(アームレッグレイズ)】を紹介します。

 シニアゴルファーの中には、日常生活で多裂筋が十分に使われにくくなり、モーターコントロールの働きが低下しているケースも少なくありません。ぜひ、無理のない範囲でトライしてみてください。

 この体操では、腕と脚は、力まず少し持ち上げるくらいで十分です。高くまっすぐ伸ばそうとすると、アウターマッスルが先行して働きやすくなり、インナーマッスルの訓練になりにくくなるためです。

① 四つ這いになって、両手を肩の真下に置く。両膝はこぶし1個分ほど開き、膝は太ももの付け根、つまり股関節より少し手の方向につく。横から見た場合、膝の角度は直角よりやや鋭角になるようにする。

② 左脚と右腕を、力まずゆっくり少し持ち上げて6秒間キープする。呼吸は止めない。このとき、軸脚の太ももが内側や外側に傾かないように、床に対してできるだけ垂直に保つ。不安定な場合は、まず腕を上げず、脚だけで行ってみましょう。

④ 左右を比べて、不安定に感じる側があれば、無理のない範囲で少し丁寧に行う。

「インナーマッスル体操(アームレッグレイズ)」の動画はこちら:

https://vimeo.com/user66224884/review/1110225513/18e77e1406

出典:『コシトレ 動けるカラダにリセットできる攻めストレッチ』(Gakken)

 実際に行ってみると、左右差を感じる人も多いのではないでしょうか。ふらつきが強い側は、多裂筋をはじめとする体幹の深層筋がうまく働いていない可能性があります。無理に回数を増やすのではなく、安定して行える範囲で、ふらつきやすい側を少し丁寧に行いましょう。

胸椎・股関節・腰椎の役割を意識しよう

 ここまで3回にわたり、ゴルフスイングと腰痛の関係を、ジョイントバイジョイント理論の視点から、松平氏に解説してもらいました。

 ゴルフスイングでは、「動くべき関節である胸椎と股関節が協調して動くこと」、つまりファンクショナル・モビリティと、「安定すべき関節といえる腰椎が適切に安定すること」、つまりファンクショナル・スタビリティの両方が大切です。そして、そのバランスを支えているのが、インナーマッスル、すなわち腹横筋・多裂筋ファーストのモーターコントロール(MC)であるというメッセージでした。

 複数の優れたプロのレッスンを見学した経験からも、松平氏は、スイングそのものに入る前の基礎的なプラクティスの大切さを実感していると言います。

「今回紹介したような、ファンクショナル・スタビリティを意識しやすくする骨盤ベルトと、前回触れたような、股関節のファンクショナル・モビリティを高めつつ、適切な体重移動を身につけるための練習ツールやトレーニングを組み合わせることは、ゴルファーに必要なモーターコントロールと全身連動の感覚をつかむためのプラクティスとして、可能性があると感じています。」

「まずはウォーミングアップの段階で、腰椎はインナーマッスル・ファーストで安定させ、股関節と胸椎はしなやかに動かす、という役割分担を確認しておくことが、特に腰に不安を抱えるゴルファーにとって有用な視点です」

 軽量化し、しなりやすく進化したクラブを使う時代だからこそ、クラブ任せにするだけでなく、自分の身体の使い方を整えておくことも大切です。今回の連載で紹介してきたジョイントバイジョイント理論とモーターコントロール(MC)に基づく基礎的な身体づくりは、長くゴルフを楽しむための土台になるかもしれません。

 3回にわたり、お読みいただきありがとうございました。

 

PROFILE

テーラーメイド腰のクリニック 院長 松平浩(まつだいら こう)

整形外科医・医学博士。順天堂大学医学部卒業。2016〜2023年まで東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授として、腰痛治療と研究に従事。腰痛・腰曲がり治療、腰部脊柱管狭窄症、運動療法、姿勢・歩行指導を専門とし、腰に不安を抱えるゴルファーの運動療法やメディカルフィットネスにも取り組む。2018年より「The Best Doctors in Japan」に10年連続選出。

Instagram「美ポジ®」では、姿勢・腰痛予防・身体の使い方に関する情報も発信中。

 

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