Bone and Joint 運動器

運動器とは

身体運動に関する諸組織・器官の機能的連合

運動器

運動器という言葉をご承知でしょうか。

身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経(運動・感覚)、脈管系などの身体運動に関わるいろいろな組織・器官によって構成されており、その機能的連合が運動器です。

筋・骨格・神経系の組織・器官にはそれぞれに独自な作用・機能がありますが、それらが密接に連動・連携して運動器としての役割を発揮しています。

自分の意志で活用する運動器

運動器

人が自分の意志で活用できる唯一の組織・臓器が運動器です。 運動器による身体活動を介して、人間としての生活や活動を行っています。

もちろん、人の組織・臓器はいずれも重要な意義と役割があります。内臓器は人の生存に必須ですが、自分の意志で制御できません。脳は重要な中枢であり、人間の証明でもありますが、脳が直接に行動することはありません。

人は運動器を介する身体活動によって、自己の存在を証明し、尊厳を保持しています。身体的な動作や行動によって、自分の活力・能力や精神性をも表現しています。

つまり、自己の『自立と尊厳を支えている』のが運動器です。たとえ哲学者や瞑想者であっても、その行動や生活には運動器を介して行わざるを得ません。

運動器が人の原点

運動器こそが動く生物(動物)の原動力であり、人はその運動器を活用して、立って、歩いて行動することから、次第にその能力を開発し、文明を発展させ、便利な世の中を築いてきました。この間、人々の主な関心は生命を長らえることでした。

したがって、医学・医療は命を長らえる臓器の保全に力を注ぐことが主流でした。しかし、命が長くなってみると、どのように生きるかが大きな関心事になりました。日々の生活の過ごし方に意義を求め始めました。生活・人生の質(Quality of Life: QOL)の向上を目指し 、個人の尊厳を尊重するに至りました。

自立と尊厳の保持には自発的な身体活動が重要な要素です。

大切な運動器

これまでは運動器の障害は生命の危険に至ることが少ないために、話題性に乏しく、運動器に対する関心はあまり高くありませんでした。運動器に痛みや支障が発生してから、その大切さに気づくのが実状でした。あたかも、日常では空気や水の重要さに関心を払わずに過ごせますが、大気汚染や断水になってみて、空気や水の大切さに気づくことと似ています。

寝たきりや要介護状態に至る状態を心配して、ウォーキングやスポーツの関心が高まっていることはその現れの一つでしょう。

自分の意志で統御できる運動器の機能が衰えては、他人の介助に頼るのみです。 自分の尊厳を維持することが難しくなります。

多い運動器の障害

現在、我が国の国民がもっとも多く抱えている身体的愁訴は運動器の障害に由来しています。

日本の現状

○ 頻度の高い自覚症状
男性 1位:腰痛 / 2位:肩こり
女性 1位:肩こり / 2位:腰痛 / 3位:手足の関節痛
○ 要介護となる原因
1位:脳卒中 / 2位:老衰 / 3位:認知症 / 4位:骨折・転倒 / 5位:関節症

※ 平成16年度国民生活基礎調査より抜粋

2004年の「国民生活基礎調査」の有訴率(人口1000人当たり)では男性では腰痛(82.0)が1位、肩こり(58.1)が2位となっており、女性では肩こり(123.0)が1位で、腰痛(107.9)が2位となっています。 ※ <参考文献>労働衛生対策の動向:国民衛生の動向・厚生の指標 臨時増刊号52巻 東京:厚生統計協会2005:P.406

介護にならないまでも生活に何らかの支援を必要とする『要支援の原因』をみると、4位が骨折・転倒、5位が関節症となっています。

いずれも運動器の障害や機能不全です。さらに運動器に関する疾患や状態としては、骨粗鬆症、変形性関節症、リウマチ、スポーツ外傷、四肢外傷、身体障害、要介護状態などがあります。

生活機能と運動器

便利な世の中は、筋肉・骨・靭帯等の衰えを促進し、運動器の障害を増加させています。

とはいえ、軽度~中等度であれば、すぐに骨折や機能障害、そして生活機能障害につながるものではなく、むやみに心配することはありません。

重症化した場合や他の要因(転倒など)が加わった時が危険ですので、重症になるリスクファクターを避け、転倒を予防・防止することで有意義な日常生活を暮らすことは可能です。

できれば若い時分から運動器の大切さを理解しておくことが望ましいのですが、残念なことに若くて元気な時分は、いつまでも元気で過ごせると思い込んでいます。中年以降に限りませんが、基本的な生活習慣を保つことが筋・骨格系の機能の維持保全に有用です。

運動器の障害は生活する機能と直結しており、運動器の保全は人生の生き甲斐や人生の質(QOL)に大きく関与しています。

運動器の健康とは

基本理念

世界保健機関(WHO)の「BONE AND JOINT DECADE 2000-2010」に呼応し、世界各国と連携して、種々の原因による運動機能障害からの 開放を目指し、終生すこやかに身体を動かすことができる「生活・人生の質(QOL)」の保証される社会の実現を目指します。

趣旨

運動器の障害はその頻度が極めて高く、生活機能を低下させ、QOL(Quality of Life)の低下を来たし、さらに生命予後にも多大な影響を及ぼし、社会に与える負担が大きいにも拘らず、これまで社会的に重視されていないのが現状です。

しかしながら、運動器の病気や障害に悩み、苦しむ人達の数は多く、生活機能やQOLの観点から、また社会経済的の観点からも決して見過ごすことは出来ません。

たとえば、小児の運動機能障害、スポーツ外傷、四肢・脊椎の外傷、腰痛、関節痛(変形性関節症やリウマチ性疾患など)、骨粗鬆症とそれに伴う骨折、など、いくつかの病気を取り上げても、ほとんどの人は子供時代から高齢に至るまでのその生涯のなかで、なんらかの運動器に関する悩みや苦痛を経験し、持っているものです。

活動の目標

  • ・運動器障害による病態に関する研究の推進 変形性関節症や慢性関節リウマチなどの関節疾患、腰痛を主とする脊椎疾患、骨粗鬆症、重度の外傷、 小児の運動機能障害と変形、などを当面の対象とします。
  • ・運動器障害がもたらす苦痛とその医療費など社会的損失の評価とその対応
  • ・個人の自立と尊厳という視点に立って運動器の重要性の評価
  • ・運動器疾患を主要な対象とする学会や団体との連携による研究と開発の強化
  • ・運動器疾患制圧の予防法や治療薬等の研究開発
  • ・学会、患者団体、医療・福祉施設、スポーツ団体、などとのネットワークの構築
  • ・バリアフリーを目指す生活環境の確率

ロコモティブシンドローム

認知度調査

運動器の健康・日本協会では、2015年より毎年、「ロコモティブシンドローム認知度調査」を実施しております。これまでの認知度については以下の通りです。