「認定スクールトレーナー制度」
について

認定スクールトレーナーとは?

スクールトレーナーの意義と発案の経緯

運動器の健康・日本協会 学校保健委員会委員長 高橋敏明

運動器の健康・日本協会では、現代の子どもの身体の二極化に対しては、2005(平成17)年度より『学校における運動器検診体制の整備・充実モデル事業』を10年近く行ってきました。

2008(平成20)年1月の『中央教育審議会答申』に、現代の子どもの新たな健康課題の一つとして、「過度な運動・スポーツによる運動器*疾患・障害」が記載されました。2012(平成24)年11月19日には文部科学省スポーツ青少年局での第4回「今後の健康診断のあり方等に関する検討会(有識者会議)」(衞藤 隆委員長)では、武藤芳照(東京大学)と内尾祐司(島根大学)の2名が参考人招致され、運動器検診について説明し、日医常任理事の道永麻里委員から、体の固い子に対する対応について質問があった際に、武藤委員からは、理学療法士が、地域の学校に出向いて、教護教諭や体育教師ととともに、スクールカウンセラーと同じように、小中高等学校のお手伝いをするスクールトレーナーによる地域貢献をする構想が述べられました。

2013年(平成25)年12月には、『今後の健康診断の在り方等に関する意見』で「学校の健康診断において、運動器に関する検診を行うことが考えられる。」と提言され、平成26年4月30日、「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、平成28年4月から「四肢の状態」が定期健診での必須項目に加えられました。しかし、施行から7年経ちますが、運動器検査が健診マニュアル通りには必ずしも行われていないことや、学校現場では運動器疾患予防のための啓発教育・指導を望んでいる実態が明らかとなっています。

第4回「今後の健康診断のあり方等に関する検討会」での武藤委員の回答は、この課題を克服できるものです。スクールトレーナーは、本協会の登録商標であって、「運動器医療の高度な学術的知識と臨床技法を有する専門家が、学校医との緊密な連携の下に、学校保健の現場に参画・支援・協力することにより、児童生徒等の運動器の健康増進と健全な成長・発達に寄与する」としています。

なお、スクールトレーナーによる保健指導の法的根拠は、「保健指導は、(医療の一部ではあるが)医療行為ではないとされ、保健師の名を詐称しない限り、何人でも業として行ってよい」(日医総研ワーキングペーパー診療補助行為に関する法的整理2016)とされます。本協会は、今後、認定スクールトレーナー制度を着実に整備し、その資格を担保し、国民の負託に応えうる認定スクールトレーナーの養成を目指していきます。

2023(令和5)年「毎日新聞」に「認定スクールトレーナー制度」の必要性が掲載された

「スクールトレーナー制度」とは?

認定スクールトレーナー制度について

運動器の健康・日本協会 学校保健委員会委員長 高橋敏明

理学療法士が学校での児童生徒等に対して保健指導的な役割を果たし、運動器疾患・障害の予防教育を実施し、もって児童生徒等の運動器の健康を推進すると共に、心身の健全な成長、発達に資することを目指して、継続的に有効なシステムとして機能するために、「認定スクールトレーナー制度」を構築準備中です。この制度は、公益財団法人「運動器の健康・日本協会」が、内閣府や文部科学省と連携を図りながら、外部人材を活用した学校保健を推進し、コミュニティスクールとしての地域と学校の協働や学校運動部活動の地域移行などを踏まえたうえで実施します。

2023年のモデル事業では、全国8都道府県、11地域で計画されており、「連携トライアングル」を骨格に整備、調整中です。つまり、(1)公益財団法人「運動器の健康・日本協会」が企画・調整し、教育や指導内容を監修し、(2)地域の大学病院や基幹病院の協力により整形外科医等(リハビリテーション医を含む)や理学療法士を派遣していただき、(3)地方自治体や教育委員会が学校との連携や調整及び予算の対応をしていただき、それぞれ緊密に連携を図りながら実施します。

その組織体制としては、認定スクールトレーナー制度委員会の下で、カリキュラム委員会、資格委員会、試験委員会の3つの委員会を設置し、それぞれ役割分担し、合否判定の結果・資格の付与等を理事会に提出し、決定します。

実施要綱としては、講習会及び資格試験を実施し、認定スクールトレーナー資格を認定し、更新は講習会を実施し資格更新します。申請資格は、理学療法士であり、認定スクールトレーナー育成のための基礎研修カリキュラムに基づく40単位(1単位:60分)の研修を修了することが必要です。単位の取得は、e-ラーニング活用30単位、対面式講習10単位としています。カリキュラムの内容は、学校における運動器の保健指導の基本的な理解と指導に加え、学校保健安全法施行規則、学校教育課程及びコミュニティスクールの理解など多岐にわたります。そのための研修の手引きとして、『理学療法士のための学校における運動器疾患・障害の予防マニュアル~認定スクールトレーナー活動の手引き』(本協会監修、(株)南江堂)の出版を2024年5月に予定しています。

第1回の認定講習会は2024年8月下旬を予定しており、2日間の日程で講習の後、2日目後半に資格試験を実施する予定としています。認定試験に合格し適格と認められ資格者となった認定スクールトレーナーが、全国の学校で活躍することにより、児童生徒等の健康増進に寄与することを心から願っています。

この新しい認定制度に対しまして、理学療法士の方々はもちろん、全国の整形外科医や学校医の先生方はじめ学校関係者の皆様のご理解とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

最後になりますが、全国の理学療法士の皆様には、来年度開始されます「認定スクールトレーナー制度」の1期生として講習会の申請をされますようお待ちしています。

「認定スクールトレーナー制度」に関する刊行物

ここでは、「認定スクールトレーナー制度」に役立つ刊行物を紹介します。

『学校の運動器検診』子どもの身体と障害の診かた
発行:中外医学社

学校の健康診断に、運動器検査が導入に至った経緯と意義、目的、運動器検査の具体的手順や、運動器検診での重要な疾患・障害のチェックポイントや事後措置の基準、運動器機能不全の現状と仮題、そして運動器の今後などを掲載しており、認定スクールトレーナーを目指す人は一読すべき書となっている。

『学校における運動器検診ハンドブック』発育期のスポーツ障害の予防
発行:南江堂

児童・生徒の体力・運動能力およびスポーツ傷害の実態、学校における健康診断と、運動器検診の内容、方法、そして医学的基礎と社会的意義など、細かくまとめられており、認定スクールトレーナーを目指す人は、ぜひ網羅してほしい内容となっている。

「認定スクールトレーナーのセミナー」情報

第1回

2022年11月12日(土曜日)
「理学療法士のための児童生徒等の運動器の健康に関する教育セミナー」〜「スクールトレーナー」の育成を目指して

第2回

2023年11月18日土曜日
「児童生徒等の運動器の健康に関するセミナー」〜「認定スクールトレーナー」の育成を目指して

※詳細は9月中旬に発表予定