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コロナ禍以降の「学校における子どもの運動器の健康に関わる問題に対しての提言」〜運動器の健康・日本協会・学校保健委員会

 昨年初めよりの世界的なコロナ禍が未だ続いており、日本でも収束する見込みは全く立っていなく、子どもの健康に関わる皆様は、大変な日々をお過ごしのことと存じます。

 さて、本協会では、全国養護教諭連絡協議会に協力をいただき、2020年11月に子どもの運動器の健康に関わる実態調査を実施しました(全国養護教諭436名の回答)。その結果、学校再開後、体力が落ちた、体調不良が多い、肥満傾向が増えた等、様々な健康問題を引き起こしていることが判明しました。また、学校現場では、運動器疾患・障害の予防について、ケガの応急処置やスポーツ障害についての研修事業を希望し、ストレッチング、ケガの予防・応急処置についての動画・資料の教材を強く望んでいることがわかりました。

 今後はコロナ禍以前とは異なった状況が継続することが予測され、学校においても新しい方法を含めて、子どもの健康を維持・増進することが必要となってくると推察いたします。

 そこで、公益財団法人運動器の健康・日本協会(丸毛啓史理事長)の学校保健委員会では、「オール日本」での子どもの健康維持や心とからだの健全な発育・発達を願い、行政・学校・医師会等の関係団体の皆様に対しまして、以下の提言をいたします。

  • 運動器検診の質的向上

 昨年から運動不足による運動器の支障が増え、体力低下・ケガ・肥満が多くなっており、全身的な疾患に繋がることが考えられますので、十分ご留意いただきますようよろしくお願いいたします。運動器検診の充実、正確性の向上や適正な措置を実施するためには、行政、学校関係者、学校医、整形外科医の皆様の連携をさらに強化していただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 運動器疾患・障害の予防・対応への教育の充実

 これまでにも関係団体からの教育資材はありますが、さらに充実させ全国の学校での共通教育教材として作製・配布することが望まれています。行政、関係団体の皆様が連携し、全国のすべての学校現場で利用できるように、ご尽力いただきますようよろしくお願いいたします。

 また、学校での保健体育授業に「運動器の障害やケガに対する対応」を必修内容としていただき、子どもの健康増進に寄与していただけますよう、よろしくお願いいたします。

  • スクールトレーナー事業の推進

 「運動器の健康・日本協会」は、子どもの運動器障害の予防教育の充実を図るために、学校医・整形外科医の緊密な連携のもと、理学療法士などの運動器の学術的知識と臨床技法を有する専門家が学校現場に対して指導教育する「スクールトレーナー」制度を検討しています。現在、モデル事業の研究を実施しているところでありますが、日本の将来を担う子どもの健全な成長・発達のために、行政・関係団体の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

私たちの提言の各項目に対しての具体的な方策について記載いたします。

1.運動器検診の質的向上

平成28(2016)年度から文部科学省の省令改正により、全国の学校で運動器検診が実施されています。運動器検診により、全国の子どもの運動器の疾患・障害が早期に発見され、一定の効果を挙げています。一方、学校現場では、学校医が運動器の専門でないために、円滑な措置決定ができていないことも報告されており、整形外科医のさらなる関与が望まれています。そこで、運動器検診を円滑に実施できますように、整形外科医による研修会や講演会の開催にご尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。また、医師会、行政の皆様には、学校での定期健診に整形外科医が様々な形で協力できるような体制づくりに、より一層ご尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

2.運動器疾患・障害の予防・対応への教育の充実

COVID-19感染症予防として、対面での授業や訪問が制限されている昨今では、学校へのIT機器導入が加速され、オンラインによる指導・教育が普及を遂げています。そこで、これまでの対面での授業・講義に加えて、オンラインなどのインターネットを介した全国共通の教育資材を行政・学校・医師会・整形外科医・理学療法士の皆様が協力して製作していただきますよう、よろしくお願いいたします。また、新たに特別支援教育に対しての生活支援の場面を想定した運動器の健康の啓発に関する教材や外国語教材、手話通訳や字幕については早急に対応していくことが望まれます。

3.スクールトレーナー事業の推進

現在の運動器検診の問題点として、検診による診察までは実施できても、子どもに対しての適切なアドバイスや直接的な理学療法的な指導が十分でないことがしばしば報告されています。昨年からのコロナ禍によりメンタルの不調を訴える子どもや教職員が増加していることが報告されており、運動の実施はメンタルヘルスの改善になります。そこで、理学療法士を中心として、学校でのストレッチング、柔軟性の向上、バランストレーニングや姿勢指導を実施することは、学校現場からも望まれています。

このスクールトレーナー制度は、これらの有効な解決策の一つになりうると考えます。そこで、全国各地で実施いたしますモデル事業の研究にご支援・ご協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。全国での普及には、各地区における理学療法士のスクールトレーナー育成が急務であり、各地域の理学療法士協会、医師会、整形外科医のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。